善意で敷き詰められている

脈打つ大地の檜皮色/君の好きなグリーンでもっとハイになって

4月のこと、あるいはスーパーアイドルのこと(幕張雑感)

※BGMは「スーパースター」と「私生活」(東京事変)。

 

4/29は、東海地方にある自宅にいました。

 

以前のブログで、

ということでいろいろ書いてきましたが、それでもやっぱり2021年の目標は「現場に行く」ことです。私のっていうか世界の目標じゃないですかこれ。善良で勤勉な(自分で言う)地方在住の一般市民が、理不尽過多な人生の数少ない娯楽として、好きなアイドルのライブに行くことができること。それを家族や同僚に温かく送り出してもらえること。

と書いたときには、実はもう完全に幕張には行く気だった。なのでまぁ、言ってしまえば達成可能なものを目標に掲げた、ちょっと出来レースくらいのつもりだったのだ。

だったのだけれど。

宣言下で、「温かく」は難しいか~なるほどね~~~、となり、

不要不急とは何か、という水掛け論を経て、

とはいえ結局最後はまあ自分で諦めた。

……この辺の話は別に特異性のあるものではないというか、だれのどんな決断にも大なり小なり付きまとうものなんだと思うのでここまで。

ここからは配信で見ての感想です、の前置きです。

 

 

 

MeseMoa.幕張メッセ単独ライブ2021「Continue 〜強くてニューゲーム〜」は、

8/28、無観客開催となった「GALAXY.5」のファイナル公演で発表された、過去最大規模での単独ライブで、

8カ月後、どんな状況になっているかなんてだれも予想がつかない中で、灯のように掲げられたもので、

私の推しは、幕張に向けて頻度を増やしてやってくれていたツイキャスの「34歳メンズアイドルとコロナ禍」の回で、

今「ライブはやればやるほど赤字」で、「消耗戦」で「擦り減っていく」とか、

「インターネット上でバズることがそのまま現場の集客につながるとは限らない」とか、

現状の難しさをはっきり言葉にしてくれた上で、

「(外野の声は多々あっても)その人たちに責任を取ってもらえるわけではない」

「自分たちの信じるライブをやっていくしかない」

「だから幕張はすごいちゃんとやります」「絶対に赤字だけど」

そう言っていた。そういう位置づけのライブだった。

 

 

「強くてニューゲーム」、たとえふりだしに戻ったとしても、でもそこからは無双じゃない??というしたたかさのある秀逸なタイトルだと思う。

だから何だろうな、たとえばもっと感情をかき乱す演出もやろうと思えばできたのかもしれない。

「本当にあきらめますか?」「はい/いいえ」みたいな選択を迫る絵が出たりとか

「はい」を選んだ世界で「あと少しだけ夢見てれば」、と「Black Rose」が流れるとか、あらためて「いいえ」を選んで〆に「New Sunshine」とか(ここぞとばかりに好みに寄ってすみません反省はしている)。

そういう世界線もあり得たかもしれない、でもそうではなかった。

冒頭、「New Sunshine」でゲームの世界に入っていった彼らは、相当レアなモンスターを発見したり、セーブポイントで回復したり、ドラゴンと戦ったりして、どんどんレベルアップしていく。話としてはすごくシンプルで、「考察」みたいなものを強くは必要としないものだ。

それは多分、「物語に頼らない」というスタンスの表れなんだと思う。今現実があまりにフィクションすぎるから、こちらが思いを重ねたり、奥行きを想像してエモくなることはもちろんできるんだけれど、基本的には純度100%の楽しさと、パフォーマンスの確かさでぶん殴ってくる、そういうセトリでした。

特に「烏合之衆」「Polaris」から、レベルアップしてのスーパーアイドルパートが本当に本当にそうだった。ここの30分間に楽しさと確かさとアイドルドリームがすべて詰まってた。あと多分お金も。

 

最初に野崎さんのツイキャスを聞いたときには、実は「赤字でも腐らず気合いを入れてやります」という意味だと受け取っていた。だから、うん、そこはいつだって絶対そうだよね、とちょっと訝るくらいの気持ちだった。

ご本人も、「もちろん3月のライブもちゃんとやりますけどね」とすぐに続けていて、そうだよねそこを疑ったことはないです、でもその憂いがある中でパフォーマンスをするのはきっと楽ではないだろうな、と思った。気がする。

 

公演を見終えて、キャスを改めて聞いて、

大きくは間違ってないけれど、私微妙に受け取り損ねていたな、と思った。

あのとき氏が言いたかったことは、「だから幕張はすごいちゃんと(お金をかけて)やります」だった、ような気がする。わからないけれど。そう思うと覚悟に少し震えがくる。

でもセンターステージとか、花道とか、トロッコとか、特効とか、3着あった衣装とか、全部全部めちゃめちゃかっこよかったです。あってよかった。

 

 

アンコールを経て、Wアンコールで披露された「陽之鳥」。

クロスフェードを聞いた時点で、今回のメイン曲であることに疑いの余地がなかったんだけれど、DDにはものすごく信頼できる映像技術がある、と知っているせいか、何となく不死鳥の映像つきで脳内に思い描いていた。実際には全然違う披露で、そのことがすごく沁みた。

スーパーアイドルパートを経て、衣装を脱ぎ捨てて、映像もなく最後の最後に身一つで出てきて歌った。

あんな大気圏に飛び込むみたいなパフォーマンス本当にずるい。焼かれてるみたいな。今声を重ねるときはたいていハモることが多い人たちが、9人で重ねたユニゾンの力強さ。

 

www.youtube.com

 

「努力の人」と呼ばれることの多い野崎さんが、「夢は努力を裏切る」「なのに何一つ諦められない」と歌うこと。

そんな中で、「夢を追いかけたい」と言ってくれること。

それが本当に本当にうれしくて尊敬できて、1年経ったけどやっぱり私はまだここです。いろんな意味で一歩も動けていない。

 

 

 

沼にハマって以来、アイドルとはなにか、スーパーアイドルとはなにか、という問いに自分の中で何度も行き当たった。それは情勢はあまり関係なくて、もともと考えるのが趣味の世界のもの。

でもその問いは、じゃあファンとは、オタクとはなにか、という問いと表裏のはずだ、と気づいたのは多分ここ1年くらい。表裏をひっくり返してしまうと、それは趣味なんてものじゃなくて、喉元に切っ先を突き付けられながら考える問いになってしまった。

 

たぶん明確な答えなんか一生出ないし出す気もあまりないのだけれど、ただ表裏なだけあって、自分も結局「何一つ諦められない」んだな、ということはわかった。冒頭の2021年の目標も含めて。

だれのどんな決断も全部白服さんが最後の挨拶で救ってくれて、「自分たちの信じるライブをやる」という言葉のあとに出てきたのが幕張みたいな最高のライブで。諦める必要がない、というのもある。

 

時間の関係か、ライブ内では次の予定の発表はなかった。それでも、幕張のテーマが「Continue」であったことは、終わった時点で疑う余地がなかった。

だから、続けよう、って思いました。私も。

地獄と地獄で迷ったら、少しでも長生きできそうな方へ。

 

 

明日はあなたを燃やす炎に向き合うこゝろが欲しい、あるいは生の現場は何時でも遠退いて僕を生かす、という話でした。

早く茶色い光の1本になりたいね。